late at night

私の愛する人は、なんて無邪気に愛する人の話をするのでしょうか。


面倒くさいからさっさと一緒になればいいのに。


素直にそれを言うと、確かにそうだけれど、今はあり得ない。
けど、いつかもう年老いたらそんな日がくるような気がする。と言う。


けれど、それは私があなたに言った言葉だということは、もうとうに忘れているのだ。


あなた達を見ていると、いつか年老いて終の住みかを求めるとき、きっと二人は求め合うような気がする。私は二人に素直にそれを伝え、おそらくそれが私が彼のもとを去った大半の理由を占めているというのに。彼ときたら全くそんなことにはおかまいなしで、この数年間のありしことを無邪気に報告するのだ。



そしてその報告を聞きながらまた改めて強く感じざるおえないその愛の確かさ。
なぜお互いにそこまで強いつながりを感じながらあえて今その距離を保っているのか。
あなた達がさっさと決着をつけてくれないことには私はどうしようもなく前に進めないのだ。
と何度言っても、またそんなはなしをややこしくして!なんて優しい笑みを浮かべる。



私の気持ちも充分理解した上でのそんなやりとりに、
いっそのこと二人を刺し殺して私も死のうかと考えたりするけれど、
どうしようもなく二人のことを愛してる私は、
結局どんな結末でも決して幸福はもたらされないということだけは明確で、
あえてそこに挑む闘士はもう持ち合わせておらず、
せめてこの記憶を全て消し去りたいとただ望むしかない。



あんまり長い間顔を会わせていると、またよからぬ思いが浮き出てきそうなので、
それでいったい何が起こったの?と今日会うことになったそもそもの主旨に話を移した。


彼はあんまり話さない方がいいような気がするけど、お前が聞きたいなら話すよ
という芝居をうった後話だすのです。


多分一番あってはならない展開になってしまったと思うねんけど、
昨年分割にした財産分与と養育費を払い終えたところだったのに、
つい先日前妻の親から連絡があり、
どこでとうやって借りたのかわからないけれど
前妻の借金が膨れ上がっていて用立ててくれないかという話だったと。


彼自身空き家になっている家のローンをまだ払い続けているし
そんな余裕はないけれど、子供のことも心配なので
結局前妻の借金の肩代わりをすることになり、自らが借金を背負ってしまった。とのこと。



やっぱり。彼が話し出したところで、そう思った私。
どうせそんな話だろうと思って今日ここへ来たのだし、別に驚くような話ではなかった。


それなのに彼ときたら、もうこの世の終わりみたいな深刻そうな表情を浮かべ
何とかしてくれと懇願するような瞳を一身に向けてくるのです。


金額によってはなんとか協力せざる負えないかとも考えて来たのではありましたが、
聞けば彼の年収からしたら2・3年で返済可能な金額であったし、
そもそも私が背負ってるものからしたら知れた金額だった。



とはいえ、そんな経験をしたこともなかった彼からしたらきっと不安なんだろうと想像はつくし、金銭的協力をすることはできないが、そういう話なら私の得意分野なので。
ということで、今後の対応、危険性、改善策を説明し、彼も納得して少し安心した表情をしてました。



とりあえず本日の目的を達成した私たちはその後は焼酎をお代わりし、
数年振りに再会したことへの喜びとこれからの話に夢中になった振りをして
約1時間後に店を出ました。



また連絡するわ。と笑顔を浮かべ去っていく彼の後ろ姿を見送りながら
何かがやっと終わったような気持ちになり。
一人涙を流すのでありました。