脳と仮想

・自分の見ている赤と、他者が見ている赤が本当に同じなのかどうか確かめる術はない。私の見ている赤が実は彼の見ている青であり、私の見ている青は彼の見ている赤であるとしても、客観的なふるまいは変わらない。このような「逆転する質感」の可能性が真剣に議論されるほど、人の心と人の心の間の断絶は絶対的である。

・他者の心が原理的に判らないものだということを、どれくらい他者の独自性の尊重へと転化しているかどうか

・私と他者とは、絶対的な意味で断絶している。私の中にあらわれる他者の魂とは、畢竟、私の意識の中に生み出された仮想にすぎない。

・世界の断絶を知り、断絶に思いを致すものは、私たちが世界を感知し、他者と交わる唯一の手がかりは結局は自らの中に生じる仮想でしかないということを知っている。